19:30~ デビッド・H・コークシアター
ジョージ・バランシン振付の「ジュエルズ」が誕生して50年の記念として、パリ・オペラ座バレエ、ニューヨークシティバレエ、ボリショイ・バレエ という3大カンパニーが一緒になってこの作品を上演する。「エメラルド」がパリオペ、「ルビー」がNYCB、「ダイヤモンド」がボリショイ。
この公演の告知をみた時から心が震えた。なんてすごい企画!みたい、観たい、この目で見たい!!
その欲求に突き動かされて、インターネットでチケットを購入。。そして本当に実現してしまった今回のニューヨーク感激の旅。
早速その感想を書き留めておきたい。(2017.7.21記録)
まずはパリ・オペラ座の「エメラルド」。
森の中のような深いグリーンのセットと衣装。幕が上がった瞬間に客席から 「ほおお」 とため息が漏れる。
1組目のカップルは レティシア・プジョル と マチュー・ガニオ。
この二人はパリ・オペラ座が10年前ぐらいに上演したときのDVDでも同じパートを踊っているけれど、本当に相性がよい。
レティシアはなんとこの公演が引退なのだそうだ。
今回も息はぴったりで音楽性もすばらしい。最後二人でユニゾンで後ろに歩いていくところは完全にシンクロしているように見えた。
マチューはここ数年ちょっと安定感しすぎな感じを受けてたんだけど、この日は若々しくて本来の華のある貴公子ぶりが全開でよかった。
ソロもジャンプがすごくて足音もしなかった。
レティシアもとっても良くて、デビューの頃の溌剌として、音感のよい、張りのある踊りをみせてくれてうれしかった。
この作品のソロパートの彼女の踊り方が大好き。糸巻きが回るような音楽にあわせた跳ねるようなポールドブラ!
パドトロワは予定されていたフランソワ・アリュに代わってマルク・モローに、セウン・パクと八菜・オニールという今売り出し中の若手3人組。マルク君を挟むのがアジア系の二人というのが画期的!時代は変わった。二人共同じくらい美貌で均整がとれてて、しかも二人の体格が同じくらいなので美しくシンメトリーなのだ。
若手らしくのびのびとして音楽の表現もよかった。
2組目のカップルは、現在のパリオペで最も理想のフレンチスタイルを体現しているといわれる ミリアム・ウルド・ブラームとマチアス・エイマン。
この二人は本当に奇跡のカップル!
ミリアムは深い森に現れた妖精そのものだった。儚げで憂愁に満ちて、体重を感じさせない。彼女が跳んでも全く足音がしない!!
そしてあのポールドブラ。常に美しく肩が下がっているのに、音楽にあわせてすうううぅっと伸びていく。えーーこんなに伸びがでるの?という位。
マチアスはそんなミリアムと共鳴するかのように、二人で幽玄の世界を作り出してくれる・・途中何回も涙がでた。
マチアスのソロも素晴らしかった。
この曲をこんなにも深く素晴らしく表現できるなんて、ミスターB(バランシンのことね)がこれを観たらきっと感激してくれると思う、
男性3人が一斉にグランジュッテ跳ぶところは圧巻。さすがパリ・オペラ座!
そして最後は静かな曲に戻り、深い森に吸い込まれるように消えてゆく。。
この理想的なキャストを実現させてくれた芸術監督のオーレリには心からお礼を言いたい!
もうひとついうと、翌日のキャストがこれまたよくて、本当はもう一日滞在してみてみたかった・・・
次はこの作品の本家、ニューヨークシティ・バレエの「ルビー」
ホームグラウンドですから、幕があがった瞬間に拍手喝采。口笛まで出た。ああ、ニューヨーカーに愛されてるよな。
さすが本家本元、この作品は本来こう踊るんだぜ!って思い知らせてくれた。
とにかくパワフルでスピーディー!そしてスリリング!
女性群舞が脚を上げて肩をくねらせる時の健康的なセクシーさ。
そして客席を盛り上がらせるエンターテイナーぶり。
まさにブロードウェイのショーダンスの世界そのもの。それをポワント履いてあくまでもバレエのテクニックで見せるんだからバランシンはやっぱり天才。そしてそれを踊りこなすダンサーたちの身体能力がすごい!
これまで「ルビー」はパリオペとマリインスキーのDVDで見たけど、今回初めてこの作品の良さがわかった。これはクラシックを崩す一歩手前のところでスリリングに、しかもユーモアを交えて踊るものなのよ。実際客席からは何度もクスクスと笑いが漏れてた。
女性のソロパートを踊った Teresa Reichlen はスラリとした色白美人でいかにもバランシン好みのバレリーナ。美しい肢体を4人の男性に投げ出して踊る(ドキドキ♡)姿は女王様か女神様。やっぱりミスターBは女性を美しく魅せることに命をかけてたことがわかる。
そんな中、ひときわ高い身体能力で丁々発止のやりとりで踊りまくってくれた リーディングカップルが、ミーガン・フェアチャイルドとホアキン・デ・ルース!!
もうもうもうすごすぎて最早笑いしか出ない状況ww
ホアキンはその上茶目っ気が利いてて、見事なエンターテイナーぶり。かのジーン・ケリーを思い起こさせてくれた。
音楽にあわせて最後までノリノリで、ヒョ~ヒヨ~~という歓声と大喝采で幕が閉じたのでした。
ああ、ルビーってこんなに楽しいバレエだったのか!ありがとうNYCB!!
そして最後はボリショイの「ダイヤモンド」
幕が上がり、群舞がポーズをとっているのをみただけで客席からホオオとため息。
さすがボリショイ、長身で重心高く堂々とスタイルがそろっていて、立っているだけで中世の宮殿にいるように思わせる。
ダイヤモンドはプティパの時代のロシアバレエを意識して作られたそうで、やはりロシアのバレエ団がやると風格が違う。
しかし、バランシンの振付を忠実に表現していたものの(音楽性はよかった)、ボリショイならではの良さはよくみえなかったのが残念。これは作品を消化したうえで理想のフレンチスタイルを完璧に表現していたパリオペラ座と大きくちがうところ。
最近はスミルノワはじめワガノワ出身者が多くて(芸監のワジーエフまで!)昔の強烈な癖がうすくなって見やすくなったけれど、新しいボリショイの個性を模索中のように見える。そんな中で、アナ・トラザシヴィリがいきいきとモスクワ派らしいニュアンスをつけて踊ってくれていて、とても目をひいた。
さて、リーディングアップルは、若手売り出しナンバーワンの、オルガ・スミルノワ と セミョーン・チュージン。
スミルノワは堂々として美しくて、そしてどこまでも高雅。究極のクールビューティー。その姿は孤高の白鳥の女王。もしかしたらロパートキナ様の後継者は
彼女なのかもしれない。音楽性も完璧だった。チュージンは6月の日本ツアーで途中病気休演してて大丈夫かなと心配していたので、無事みられてよかった。
彼はそんな女王様にかしずく美しい騎士。白いマントが似合いそう。ちょうどライモンダのジャンみたいに。スミルノワとは相性がよくて、バランシンの振りを忠実に表現しながら、高貴で美しい宮廷の世界を体現してくれた。長いパドドゥも全くだれることがなかったよ。最後、男性が女性の手に口づけするところで、客席からまたため息。
ラストのグラン・ポロネーズのところはボリショイの誇る長身の男性陣がずらりそろって圧巻。女性の白手袋もものすごく似合ってて、この群舞のビジュアルのすばらしさは
どこも真似できないボリショイの良さだと思う。
音楽にあわせてどんどん盛り上がりを見せてラストは拍手喝采で幕がおりたのでした。
最後に、3つのバレエ団が順にルべランス。全員が舞台に一同に会して、女性ソリストには花束が贈られた。そしてそれぞれのカンパニーを率いる芸術監督、
オーレリ・デュポン、ピーター・マーチンス、マハール・ワジーエフの3人も舞台にあがり、客席はほぼ総立ち。
それぞれのダンサーもお互いに刺激を受けてすごくいいパフォーマンスができたのではないかな。大盛り上がりで大成功の初日となりました。
初日ということもあってか、客席はドレスアップした人ばかり。モデルやダンサーっぽい人もたくさんいて、ロビーに集う人々を眺めるだけでも楽しかった。
本当にここはハイソサエティの社交場なのね!玄関には公演の美しい看板が掲げられ、劇場内の2回ロビーの壁には、ジュエルズ初演時の貴重な写真がパネル展示
されていました。(ピーター・マーティンスも写ってる)!中でも、真ん中のカラーパネルの、初演のミューズ達に囲まれるミスターBの写真がとても素敵だった。
ミスターBは今日の公演をみたらきっと喜んでくれると思うよ。
2日目は、パリオペのキャストが一新されるのと、(ドロテとレオノール!)ルビーをボリショイが踊り、(クリサノワとオフチャレンコの丁々発止すごそう!)、ダイヤモンドをNYCBが踊る。溌剌としたバランシン流宮廷絵巻がどんなものなのかが見たい。
どなたかのご報告お待ちしております!